|
このたび、日本薬学会関東支部支部長に就任しました第一三共株式会社の川邉武史と申します。就任にあたりご挨拶を申し上げます。
現代の医薬品を取り巻く状況は大きく変容している過渡期にあります。世界最高水準の医療の提供と健康長寿社会の形成を目指した政府の健康・医療戦略の後押しを受け、化学合成の叡智が積み上げられている低分子医薬品に加え、ペプチド・核酸・抗体などに代表されるバイオテクノロジーを活用した中高分子・バイオ医薬品の開発が活発となり、従来は治療が困難であった疾病に挑み克服する明るい未来が少しずつ見えてきております。一方、近年は製薬企業の品質問題に端を発する業務停止命令が発令されるなど、医薬品の信頼を失墜させる暗い事態が生じていることに対して決して目を背けることは許されず、広く様々な関係者に対してコンプライアンスの遵守が求められています。医薬品にまつわる挑戦と信頼の両立が日本国民の皆様をより豊かな生活へ導く力の源の一つであると信じております。
1880年(明治13年)に日本で最も古い学会の一つとして誕生した日本薬学会は15,000名を超える会員数に成長しました。「くすり」に関する研究者や技術者が学術上の情報交換を行うことによる学術文化の発展を目的としており、生命現象の解明、医薬品を使ったさまざまな病気の克服、医薬品の適正使用を目指した未来を創造しながら着実に発展し続けております。学会員は薬学研究者や薬剤師を養成するアカデミア、医薬品の適正使用を推進する病院や薬局の薬剤師、研究機関や製薬企業にて創薬研究や医薬品開発に従事する研究者、薬事行政を管轄する規制当局など多様な専門家によって構成されており、日本国民が大きな関心を寄せている薬学の諸課題を網羅的に対処する重要な役割を担っております。
国内8支部の中で最大規模の関東支部は、所属される会員の先生方の幅広い専門性の継続と発展を目的とした多くの事業を実施しています。COVID-19の蔓延には予断を許しませんが、2023年度は対面での開催を再開することを考慮に踏まえ、オンラインやハイブリッドなど、より適切な新しい形での事業の実施を企画しています。会員向けには「第67回日本薬学会関東支部大会・若手シンポジウム」(9月、明治薬科大学)、「学術講演会(10月又は11月、長井記念ホール)を開催いたします。支部大会は「基礎・臨床・実務の多様性が次世代医療を創る」、若手シンポジウムは「製剤の体内動態を精細に解明する」、学術講演会は「医薬品CMCをリードする分析研究の最前線」をテーマとしており、基礎から臨床、医薬品産業に至る広範囲を包含しております。大学薬学部や病院薬剤部などの教育・研究・臨床機関に所属する学生・大学院生や若手先生方のみならず、企業にて医薬品研究開発に従事する研究員の方々からの積極的な参加をお待ちしております。また、「薬剤師向け研修講習会」(11月又は12月、オンライン開催を予定)は会員以外の薬剤師にも参加できる機会として計画しております。加えて、一般市民の皆様に向けましては、健康の増進と薬への関心を高めていただくことを目的とした市民講座「くすりと健康2023講演会」(6月、長井記念ホール)を開催し、宇宙ステーションを利用した話題やセルフメディケーションについて講演いただきます。さらに、未来の薬学を担う小学生科学者に大変好評いただいております「子ども実験企画」(8月、杏林製薬株式会社わたらせ創薬センター)は3年ぶりの対面開催を楽しみにしております。
関東支部におきましては、基礎薬学、医療薬学、及び臨床薬学の各分野でご活躍され優れた研究業績を挙げた41歳未満の若手研究員の功績を称え、支部奨励賞を授与し、授賞講演を行っております。奮ってご応募いただきますよう、お願い申し上げます。また、昨年度からの新しい事業として、日本薬学会及び関東支部にて授賞された先生方の素晴らしいご業績をより多くの方へお伝えすることを目的とした「オンライン授賞記念講演会」(12月頃、オンライン開催)を本年度も開催する予定です。
医薬の学術研究成果を生かした優れた医薬品を病院や医療機関へ届ける役目を担っている製薬企業研究員の立場から、本年度は関東支部長を拝命いたしました。この度、実際にご使用いただくための医薬品を研究開発し製造供給する立場であるからこそ伝えられること、薬学会に貢献できることとは何かを熟考する機会をいただきましたことを大変嬉しく感じております。一年間、微力ではございますが精一杯努力する所存ですので、皆様のご理解とご支援、またご指導やご提言も併せて賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2023年4月
日本薬学会関東支部長 川邉武史
日本薬学会関東支部事務局 〒150-0002 渋谷区渋谷2-12-15 日本薬学会長井記念館 e-mail. kantoshibu@pharm.or.jp | |
COPYRIGHT © 公益社団法人日本薬学会関東支部